: 宣言
ADXの建築は、いわば森との持続可能な相互作用を持った装置である。吹く風を阻まず。流れる川を堰き止めず。鎮座する岩石を破壊せず。動植物を踏みにじらず。土壌に適した素性の確かな木を使い、自らの手で物をつくる。伐倒した山には新たな木々を植え、バランスよく森が循環するサイクルを促す。
私たちにとってこの仕組みこそが建築の土台であり、建造物の完成はひとつの通過点に過ぎない。木が育ってきた数十年間から連なる時間軸上に、設計、施工、運用、さらには修繕や解体までをも含む、未来のプロットを打ち込んでいく。私たちの設計とは、つまり人と森が共存する時間の再構築であり、意匠が先行することはありえない。
常に自然と建築との調和を優先しながら、人々が森で呼吸する喜びを、地球の美しさを感じるための場所をつくる。人と森のあいだに、在るべきものを。それを実現するために、私たちはあらゆる前例を疑う。最新のテクノロジーを取り入れ、ときに自ら発明する。すべては、母なる森と生きることを決めた、私たちADXの終わらない挑戦である。
: ADXを紐解くキーワード
木の価値を高めること
木材として使った後も、植林すれば再生産することができる。コンクリートや鉄に比べて製造する時のエネルギー量が少なくCO2の発生量が抑えられる。あらゆる建築材料の中で、木はもっともサステナブルな存在でしょう。しかし、国産材はまだまだ過小評価されているのが現実。林業は衰退し、荒れた山は珍しくありません。でも、だからこそADXは木にこだわります。私たちの建築を通して木への評価が高まり、需要を生まれたら、森を守るきっかけになるはず。森再生のムーブメントは、私たちが木造建築を通して実現したいことのひとつです。
循環可能な仕組みをつくる
ADXにとって建築とは、建物を建てることだけを意味しません。設計から施工、移動や解体に至るすべてのライフサイクルをデザインし、周辺環境と調和し共存していく計画を立てること。可能な限り周囲の生態系への負荷を抑えて施工すること。建物の寿命が来たとき、それぞれの素材に再生の選択肢を用意すること。私たちがつくりあげるのは循環可能な仕組みそのものであり、建築物はあくまでその象徴です。
手段としてのテクノロジー
私たちは最新のテクノロジーも貪欲に取り込みます。コンピュテーションによるデザインやロボットを使った施工、ときに新しい建設機械を発案することもあります。しかし、テクノロジーの追求がADXの目的になることはありません。どれほど便利な最新技術であろうと、あくまで手段であり、数あるアプローチのひとつ。優先順位を忘れず、好奇心と探究心を持って向き合う。それが私たちのテクノロジーに対するスタンスです。
進化する共同体へ
巨大で頑丈な生物も、外部環境の変化であっけなく絶滅することがあります。それは組織も同様でしょう。単細胞のように、ただひとつの機能に特化すれば脆くなる。私たちは長く事業を営むため、なるべく異なった専門性の受け入れを心がけています。一人ひとりがユニークな個性を発揮し、各々の役割を担いながら、同じ方向へと進んでいく。単細胞から多細胞へ。柔軟さとバランスを備え、変化への対応力を持ち合わせた共同体こそが、ADXが目指す組織です。
答えは自然の中に
私たちは、ときに数字上の合理性より感情や本能に従います。仲間の表情、現場の景色、人間の熱量。その選択の背景には、安達太良山をルーツに持ち、より自然体であろうとする私たちの風土にあるのかもしれません。ADXのメンバーは好んで現場に足を運び、その土地の木に触れ、山を登り、地球と対話しようとします。自然の中で生まれたインスピレーションこそが、私たちの行き先を決めます。
山小屋を目指す
私たちにとって、山小屋は特別な存在です。限られた資源ゆえに、必然的にその場にあるエネルギーを生かすことを前提とした設計。厳しい気候条件に耐え得る耐久性や、資材運搬・施工の工夫。それでいて、疲れた登山者を癒してくれる快適性と、眼下に広がる素晴らしい景色との調和を求められます。山小屋はADXにおける挑戦のメタファー。私たちが持つ知識や経験、技術をすべて注ぎ込んで、山小屋をつくりたい。世界中に山小屋を建てることは、私たちの密かな野望です。
CEO
安齋 好太郎Kotaro Anzai
1977年福島県二本松市にて、祖父の代から続く安斎建設工業の3代目として生まれる。
自然と共生するサスティナブルな建築を目指し、2006年にADX(旧Life style工房)を創業。木の特色を活かし、木の新しい可能性を追求したダイナミックな建築を得意とする。
幼い頃から木に触れて育ったことから木材・木造建築に造詣が深いことで知られ、Wood Creatorとして国内外の大学や企業で講演活動を行う。登山がライフワーク。
Awards
- 2008年
- TOSTEM㈱ 第19回TH大賞『リフォーム部門地域最優秀賞』受賞
- 2011年
- ㈱LIXIL 第21回TH大賞『新築部門審査員奨励賞』受賞
- 2012年
- ㈱LIXIL メンバーズコンテスト2012『新築部門地域最優秀賞』受賞
- 2013年
- 平成25年度 日本建築士会連合会賞『CAVE』奨励賞 受賞
- 2013年
- LIXILメンバーズコンテスト2013 『CAVE』新築部門 大賞受賞
- 2014年
- 第8回JIA東北住宅大賞2014『CAVE』優秀賞受賞
- 2015年
- 第1回JAPAN WOOD DESIGN AWARD 2015
「五浦の家」ソーシャルデザイン部門入賞
第11回木の建築賞「五浦の家」選考委員特別賞
- 2016年
- 第9回JIA東北住宅大賞「△の家」優秀賞受賞
第21回ふくしま住宅コンクール 「格子の家」 奨励賞
- 2017年
- 福島県建築文化賞 「LARGE LAB TOWN」 特別部門賞受賞
JAPAN WOOD DESIGN AWARD 2017 「One year project」ソーシャルデザイン部門入賞
- 2018年
- ふくしま住宅建築賞「うつろいの家」入賞
JCD Design Award 2018「春華堂 POP UP STORE KANDA」入賞
T-1グランプリ2017 「堂前の家」受賞
- 2020年
- AACA賞「soil house」入選
- 2022年
- ウッドデザイン賞2022「SANU 2nd Home」最終優秀賞(環境大臣賞)
ウッドデザイン賞2022「KITOKI」上位賞奨励賞(審査委員長賞)
日本空間デザイン賞2022「SANU CABIN(SANU 2nd Home – 八ヶ岳1st)」Silver賞
ウッドシティTOKYOモデル建築賞 「KITOKI」最優秀賞(知事賞)
令和4年度木材優良施設等コンクール 「KITOKI」優秀賞
2022年度グッドデザイン賞「KITOKI」 入選
- 2023年
- T-1グランプリ 2022 「KITOKI」受賞