
プロジェクトのはじまり
SANUは「Live with nature. / 自然と共に生きる。」をコンセプトに掲げるライフスタイルブランド。 気温上昇、異常気象の多発、生態系の変化、それに伴う食糧・水の不足といった環境問題は日々深刻化し「気候危機」と呼ばれるほど、差し迫った課題であると私たちは捉えています。さらに国連の調査によると、1950年で30%に過ぎなかった都市人口は、2018年には55%、2050年には68%に達すると予測され、急激な都市化が進んでいます。日本においても、人口集中と過密化が進んできた都市部は、コロナ禍において多くの問題を表出させました。そんな中、ある意味反動的に、人々の意識の中では「生活の中に自然を取り入れていきたい」という欲求が高まっています。 そこで、SANU 2nd Homeは、「自然の中で生活を営むためのもう一つの家」を提供するサブスクリプションサービスを通して、人々が身近な自然の中に繰り返し通う生活様式を提案します。

滞在拠点となる「SANU CABIN」の構想は、自然環境への負荷を最小化したサーキュラー建築として、建物を構成するあらゆる建築分野の最先端の技術と知恵を結集したプロダクトの実現を目指してスタートしました。

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初期のイメージパース。地中に杭を打ち込む基礎杭工法を採用することで、土壌への負荷を軽減するプランを採用。
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シンボルとなるのは大きな窓。都心では味わう事ができない自然を近くで感じる場所でありながら、安全かつ快適に滞在できるプライベート空間を設計する。
プロジェクトの周辺環境について
SANU 2nd Home展開予定地は、国立公園・国定公園に近接しており、ユーザーは日本各地美しい海、山、湖から目的や気分に合わせて滞在先を決めることができます。一方で、建築条件としては、斜面が急な山地や深い森の中の拠点も多く、いかに周辺の自然への負荷を最小限に留めるかが重要な課題となりました。
立案したプラン
従来のリゾート開発は、木を切り倒す大規模な造成や、大量のコンクリートを使った基礎工事、建設現場での大量の廃棄物など自然環境への負荷が小さくありませんでした。SANU CABINでは、従来の開発とは一線を画し、自然環境への負荷を最小化したサステナブルな工法で、建築・開発を行います。メインの建築資材として、日本の森の間伐を促進するため国産木材を100%使用し、コンクリートの使用を最小化。加えて、釘やビスを極力使わず、すべての部品を一つ一つ簡単に分解できるように設計しているため、建てて終わりのスクラップ&ビルド型ではなく、部材を交換しながら建物の維持管理を長期的に行なったり、2週間で解体し別の場所に再建築できる「サーキュラー型(循環型)建築」を実現します。





ファミリーでも心地よく過ごせる広いリビングや、美しい景色を見ながら朝食を楽しむためのテラスなど、自然の中で快適に生活を送るための設備も充実。高さ4mの天井と雄大な景観を部屋に取り込む大きな窓によって開放感のある空間を実現します。
今回の新しい挑戦
日本政府が正式に宣言した「2050年カーボンニュートラル」。資材製造・建築・改修・運用まで含む建築関連のCO2排出量は、日本の総排出量の33%を占めています。世界の先進国で2番目の森林率を誇る日本において、樹齢45年以上の収穫適齢期を迎える樹木の割合が増える中で、森林資源を活用し、よりCO2吸収力が高い若い木を植えることは、大きなCO2削減効果を持ちます。SANU CABINでは、独自の環境再生型プログラム「FORESTS FOR FUTURE」を実行し、カーボンネガティブを実現します。

SANU CABINは、国産材を100%使った木造建築です。製造過程で多量のCO2排出を伴うコンクリート・鉄の材料使用量を80%削減。木材は、持続可能な森づくりに取り組む東北・岩手県の釜石地方森林組合から樹齢50〜80年程度の間伐材を直接調達します。食の分野で、生産者から消費者までの安全性と品質管理を見える化した「Farm to Table」のように、原木調達から製材、加工、施工のプロセスを可視化します。

地中に杭を打ち込む基礎杭工法を採用。コンクリートを大量に使用する一般的なべた基礎工法に比べて、土壌への負荷が小さく、その土地固有の風や水の流れを止めません。また、建設により伐採する木の本数を最小化(30%程度)できるようキャビンを配置し、その土地の生態系への負荷の極小化に努めます。

SANU CABINは、解体の後までを想定してデザインされています。コンピューターで管理された部材1つずつを工場で製材し、現場で組み立てるプレファブ建築を採用。釘やビスの使用を最小化することで、ほぼすべての部品を分解できるように設計しています。部材の交換やメンテナンスを加えながら50年間の運用が可能な耐久性があり、建物を解体し別の場所に再建築できるサーキュラー建築を実現します。

デンマーク・コペンハーゲンの環境建築コンサルティング会社、henrik-Innovationの協力のもと、初期的なライフサイクルアセスメントを実施。SANU CABIN1棟の建設により排出されるCO2の量の測定と、従来型の建築(コンクリートべた基礎工法の木造建築物)との比較を実施。結果として、SANU CABINは、一部使用される鉄やガラスなどの製造のために1棟13t程度のCO2を排出する一方、木の炭素固定効果を含めると1棟11tのCO2を吸収・固定化しているという結論に至りました。 *Sanu調べ

使用する素材
